Fitzgeraldの日常

通訳案内士資格保有の貿易業の日常を書き綴っております。

三朝温泉

  冬は早朝が趣深く、雪の降っているときの面白さはいうまでもない。霜などがたいへん白く、またそうでなくても、非常に寒い朝、火などをいそいでおこして、炭火を持ってゆくなど、冬の情感にぴったりである。
 と、平安時代に言ったのは、かの清少納言であるが、やはり冬の、それも6時ぐらいのまだ明るくはなく、徐々に夜が明けて行く時間帯に寒さを堪えながら部屋の暖房器具のスイッチを入れる事は、現代においても趣深い事ではある。それが特に鄙びた温泉地で有れば、なおさら情緒深い。
  さて香港から帰国後、1週間ほどの期間を開け、鳥取三朝温泉に行ってきた。
三朝温泉、温泉地は数あれど、三朝温泉のメジャーではないがマイナーではないそのポジションと、そして山陰という地方が、冬という時期にピッタリだと感じた。普段は旅の情緒というものを無視し、飛行機を駆使しているのだが、この温泉地には、新幹線と特急を乗り継いで向かおうと思っていた。別に、失意の旅ではないが、山陰地方の温泉地にはこの交通手段がピッタリだと思ったのである。
  新大阪より約2時間40分。平日ということもあり、車内は空席が目立つ。明石を通過してからは車窓の風景も一気に変わり、鳥取で停車後は、列車の乗客も数人という状況になった。
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  やはり初めて山陰地方に電車で向かう、神戸を過ぎ、明石を過ぎる頃になると、新大阪にて購入した駅弁も食い尽くし、手持ち無沙汰なので、窓からの風景を眺める。車窓から眺める明石の海は、何処かさみしげであった。『源氏物語』で光源氏が蟄居していたのが、ここ明石だと思うにつけ、明石の、その淋しさを抱えた風景は、他の兵庫の海とはまた違った味わいがあると感じた。
  駅に着き、旅館の送迎バスに乗り込む。今回は何も観光しないと決めてあった。ただ、温泉に入り、その日の朝に取れたカニを食うこと、ただそれだけの為に鳥取まで向かったのである。二日目も三朝温泉付近の白壁土蔵群・赤瓦の町並みを30分程度探索するだけ。
  宿は、依山楼岩崎という旅館。ここに決めたのは、朝に取れたカニを蒸し・焼き・生で食べさせてくれるからであった。そのカニがまた美味いのである。カニばかりでは飽きるからと、途中ステーキとしゃぶしゃぶを挟み、最後の焼きガニの味は忘れられない。
  そして温泉。外は寒く、雨に混じって雪もちらついている。外で歩くだけでも鼻水が出てくるような寒さ。かといって、震える位でも無い寒さが、温泉で火照った身体をクールダウンしてくれる。
翌朝、何も考えずに、温泉と料理だけを堪能し、部屋の窓から景色を眺める。ようよう明るくなっていく景色は、取り立てて何も目を見張るものでは無いが、だからこそ印象深く美しかったのである。
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